■文章上達の過程


▼ルールを自覚する

文章の上達は、どういう過程をたどるものでしょうか。ビジネス人は、忘れてしまっているかもしれません。私の場合、言葉の不自由な方々の訓練によりそっていましたから、何となく感じるものがありました。そのとき感じたことを、子供の作文指導で確認することができました。

先にルールを覚えるのではありません。繰り返しの反復によって、自分でルールを自覚していくのです。自然な言語習得の場合、ある程度お話が出来るようになってから、ルールを自覚的に学ぶ課程がやってきます。

 

▼できることを強化する

失語症の方々の場合、症状がまちまちですから一概には言えませんが、ある程度軽くて言葉が出てくるようになってくるケースでは、上手な誘導が大切になります。理屈を教えただけでは効果がありません。理屈を優先させても、言葉が使えるようになりません。

出来るところから固めていきます。単語が言えるなら、その単語の正しさを保障していくことが必要です。うなずくだけでも安心になります。そうすると自在に使える単語が増えてきます。同時に、それらをつなげていきます。難しいのは、つなげ方です。

 

▼ポイントだけをどり出してみる

おかしなつなげ方になることは、しばしばあります。なかなか完全にはいきませんから、おかしなところの中でもポイントになるところを、それとなく気がつくようにすることが大切です。

ポイントだけを取り出してみると、わかりやすくなります。谷崎潤一郎は、映画の題名に違和感をとなえています。「女はそれを我慢できない」とあるけれども、「かなり奇異に響く」と書いています。まちがいに近いだろうと思います。

こういうとき情報を絞って、「何をできない」と言うのが正しいのか、「何ができない」と言うのが正しいのかと聞いてみると、たいてい「何が」でしょうとお答えになるはずです。

 

▼音感を利用する

わたし達は、こういうことに気づく音感を持っています。奇異に響いたら、その部分を取り出して確認してみると、違和感の正体に気づきます。

「何時に~する」は正しいですね。「何時を~する」は奇異に響きますね。しっくり来る表現ではないでしょう。当てはまる場合があっても、冗長な言い方になりそうです。

自分で自分の文章に違和感をもつことが大切です。障碍者の訓練でも、子供の作文でも、そして、ビジネス人の文書作成においても、重要なことです。気づくことがルールに先行します。

 

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